はたはた寿しに関して「種麹屋」「秋田今野商店」の社長の今野宏さんが執筆した「あきた経済2022.2/コラム温故知新」で紹介されています。要約すると……
最後の部分ですが弊社でつくられるはたはた寿司は、通年で食べられるように漬けられています。そして一番美味しくいただける時期に皆様にお届けしています。 それでは、はたはた寿しについて書かれている部分をご紹介いたします。
冬の味覚に異変
秋田の冬の味覚を代表する鰰が、記録的不漁 に終わったというニュースが流れました。今年こそはと期待した漁師の方達、そして鰰を食べないと冬を越せないという秋田県民、みんながどれほどがっかりしたことでしょう。雷鳴とどろく荒れた初冬に日本海で獲れる鰰は秋田の正月には欠かせない祝いの魚でした。かつては木 箱に溢れんばかりの鰰を何箱も買い求め、各家 庭で盛んに鰰寿司が作られていたことを懐かしく思い出す人も多いことでしょう。
県内での鰰の漁獲量はピーク時の昭和30年代には2万トンにもおよび、鰰一箱が30円〜50円、木箱代が50円でした。今では一匹1,000円前後の高級魚になってしまい、鰰寿司を作る人も随分少なくなりました。
握り寿司のルーツ
鰰寿司のルーツは琵琶湖の鮒寿司で、私達が食べている握り寿司もここから生まれたと言われています。鮒寿司は鮒を塩漬け後、1年以上ご飯に漬け込んで、乳酸発酵の働きを利用して保存性と風味を持たせます。乳酸菌だけではなく種々の嫌気性菌も存在するので酪酸やプロピオン酸のような臭気が漂い、その匂いたるや強烈です。酪酸臭とは銀杏の実の臭い、プロピオン酸は刺激的な酸っぱい臭いで、匂いが強烈という点では「くさや」と双璧を成すものです。
その後、鮒寿司のような匂いの強い寿司は次第に敬遠されるようになり、臭いも弱く出来上がりまでの日数が短い鯖、鯵、秋刀魚、鮎などのいわゆる生馴れ寿司が作られるようになりました。鮒寿司と生馴れ寿司の原料は魚とご飯と 塩だけで、麹を使わないのが普通です。
その後、東北、北海道では麹を用いる方法が 考案されました。鰰寿司や北海道の鮭寿司など がそれです。麹を用いることにより寒冷地での 発酵を早めようという昔の人の知恵です。それ でも生臭みが残るため香辛料や野菜を一緒に漬け込んだのでしょう。いずれにせよ魚もご飯と 一緒に乳酸発酵して作るのが基本でしたが、元禄の頃になると早寿司といってご飯に酢を合わせて魚を漬ける寿司が関東方面を中心に作られるようになりました。これが今日の握り寿司の始まりと言われています。
発酵微生物東西対決
ひとくちに発酵食品と言っても東日本と西日本とでは大きな違いがあります。
私たち東日本の発酵のキーになっている微生 物は麹菌が主体であるのに対して、西日本の発 酵のキーは乳酸菌です。言い換えれば東は旨味を麹に求め、酸味を嫌う傾向が強く、西は旨味 の起源を乳酸菌による柔らかい酸味に求める傾向にあります。
漬物を見ても、それは明らかです。東日本では麹の甘みを活かした漬物が主流ですが、西日 本では糠漬けが一般的で、乳酸菌がその秘伝の 味を作り出しているのです。東北などの寒冷地 では酸を作り出す乳酸菌は活発に増殖できません。物が腐りにくい環境ともいえます。一方、 温暖な西日本ではご飯と塩と自然に発生する乳酸菌の出す酸で腐敗を防止しているのです。東 北人は酸味イコール腐敗と結び付ける傾向があり、酸っぱい酸を嫌う人が多いのが特徴です。事実、驚くべきことに西日本では地域に酢造屋があるのに対し、東日本と北東北には数軒のみ、 北海道に至っては一軒もありません。このように微生物の造り出す味は東と西で大きく食文化を分けているのです。
鰰寿司 麹でふっくら
鰰寿司には他の地域にない特徴があります。それは必ずしも鰰を塩蔵せず、塩蔵する場合で も短期間で酢を使う場合もあるという点、漬け込み時に多量の麹を用いて熟成を促す点です。そのため各家庭で漬け込まれた鰰寿司は身がふっくらとしていて美味しいのです。「すし」が熟れるまで1か月以上かかり味が良くなるのは1か月半位経った頃ですから、食べ頃は1月中頃から2月一杯です。ですから年取りや正月のお膳の物はまだ少し若く、本当の味ではありません。
また発酵食品には味のピークがあります。微生物が生きているので時期を逃すと乳酸発酵により酸味が増し、味がぼやけてしまいます。発酵食品だからこそ旬の味を大切にしなければいけません。「最高の味は旬にその地でいただくに限る」のです。旬の鰰寿司は「ぶりこ」も身も 軟らかく、麹の旨味が生きたまさに発酵の国秋田ならではの味です。 (出典:著 今野宏「あきた経済2022.2/コラム温故知新」より抜粋)
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